宮崎地方裁判所 昭和25年(行)1号 判決
原告 別府嘉三次 ほか五名
被告 国・宮崎県知事
一、主 文
原告等の訴を却下する。
訴訟費用は原告等の負担とする。
二、事 実
原告等は「被告宮崎県知事が、原告等耕作にかかる別紙目録記載の土地につき昭和二十三年三月一日為した未墾地買収計画の認可は無効なることを確認する。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求め、
その請求の原因として、つぎのとおり述べた。
「 第一、一、別紙第一目録記載の各土地は、原告別府嘉三次が、昭和二十年七月一日、当時その所有者であつた訴外三菱石油株式会社との間に小作契約を為し、爾来今日に至るまで同人が引続き耕作し居るもの、
二、別紙第二目録記載の各土地は、原告前田政吉が、昭和二十年七月一日、当時その所有者であつた三菱石油株式会社との間に小作契約を為し、爾来今日に至るまで同人が引続き耕作し居るもの、
三、別紙第三目録記載の各土地は、原告黒木新市が、昭和二十年七月一日、当時これが所有者であつた三菱石油株式会社との間に小作契約を為し、爾来今日に至るまで同人が引続き耕作し居るもの、
四、別紙第四目録記載の各土地中三五、三六の各土地は、昭和十九年頃、当時その所有者であつた訴外綾部末吉と、同二一、二〇、一八の各土地は、昭和六年頃、当時その所有者であつた訴外黒木嘉助と、同四九の土地は、昭和十五年頃、当時その所有者であつた訴外高森為市と、原告菊地嘉助との間に小作契約を為し、ついで昭和二十年七月一日別紙第四目録記載の各土地全部について原告菊地嘉助と三菱石油株式会社との間に小作契約を為し、爾来今日に至るまで同人が引続き耕作し居るもの、
五、別紙第五目録記載の各土地中一四の土地は、原告成合進の先代が訴外黒木喜平と、同一五、三四(畑地)の各土地は、昭和十八年六月頃原告成合進が三菱石油株式会社と、同三三、三四(田)の各土地は原告成合進の先代が訴外日高猪兵衛と、同三一、三二の各土地は昭和十八年原告成合進の先代が訴外後藤某と、同二二の土地は、昭和十八年原告成合進と訴外佐藤彌平治との間に、それぞれ小作契約を為し耕作していたものであるが、ついで昭和二十年七月一日原告成合進と三菱石油株式会社との間にさらに右全部の土地について小作契約を為し、爾来今日に至るまで同人が引続き耕作し居るもの、
六、別紙第六目録記載の各土地は、原告成合嘉市が、昭和二十年七月一日、当時これが所有者であつた三菱石油株式会社との間に小作契約を為し、爾来今日に至るまで同人が引続き耕作し居るもの、
七、別紙第七目録記載の各土地は、原告成合進、同成合嘉市が、昭和二十年七月一日、当時これが所有者であつた三菱石油株式会社との間に小作契約を為し、爾来今日に至るまで同人等が引続き耕作し居るもの、で原告等はいずれも適法な小作契約による耕作権者で、且つ、右各土地は全部農地調整法ならびに自作農創設特別措置法にいわゆる農地である。
第二、然るに、被告国は、
訴外宮崎県農地委員会が、昭和二十二年十二月二十日右本件各農地につき、附近一帯の農地百数十町歩と共に、昭和二十三年三月二日を買収の時期とする自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)第三十条第一項第一号による未墾地買収計画を定めて公告縦覧に供し、被告宮崎県知事が昭和二十三年三月一日右買収計画を認可し、同年十二月二十五日前記三菱石油株式会社に対して買収令書を交付した結果本件各土地につき同年三月二日これが所有権を取得した。
第三、ところが、本件各土地は、前述のとおり、適法な小作契約に基き原告等が耕作している農地であり、且つ、附近一帯の土地も全部これと同様の農地であつて、自創法第三十条第一項に全く該当しない土地である。右法条による土地の買収は同法第一項第一号乃至第三号ならびに第八号に各該当する土地に限定されており、而も、本件各土地は前記各号のいずれにも該当しない農地であつて、これを政府が買収する必要全く存しないのみならず違法である。
のみならず本件各土地ならびに附近一帯の土地については、これを農地と認めて自創法第三条に則り農地買収計画を樹立し、昭和二十二年六月三十日宮崎県農地委員会の承認、ついで同年七月二日被告宮崎県知事の買収令書の交付により買収した事実があり、その後如何なる魂胆か右買収を取消し、前顕の如く本件土地ならびに附近一帯の土地をさらに未墾地買収計画に基き買収したもので、右の経過を詳細検討すれば本件買収が当然無効であることはまことに明瞭である。
以下その無効なる理由について述べる。
第四、本件土地につき(他の附近土地と共に)さきに宮崎県知事の自創法第三条により為した適法な農地買収計画を取消した行為は当然無効であり、したがつて、右買収計画は有効であるから、本件土地につき更に後日再び自創法第三十条により為した未墾地買収計画は無効である。
およそ、行政行為に法律上の瑕疵があるときは当該行為を為した行政庁において自らこれを取消すことができるのが原則であるが、他方、この行為を取消すについてはおのずから一定の制約を受けるものといわねばならない。即ち、行政処分が一旦有効に為された後にこれを取消すことは既存の法律秩序を破壊することになるから、これを是認するに足る正当の理由の存することを絶対的条件とする。
この点につき学説は、行政行為の取消を、その行為の内容により、自由裁量による取消と、き束された取消とに区別し、行為の内容が単に国民に義務を負わせ、又は、権利を制限するに止まるものは、行政庁の自由裁量によりこれを取消し得るに反し、国民の義務を免除し、又は、権利を設定する行為にあつてはその取消は自由でなく、これを取消すことの公益上の必要が当事者にとつてその取消によつて受ける不利益を忍ばねばならない程度に重大である場合に限り許されるとしている。
これを本件につき考察するに、本件土地につき、他の附近の土地と共に自創法第三条に基き買収処分を為した以上は、右買収地につき正当な小作権を有するものは、当然その権限の範囲内において自己の小作地につきこれが売渡を受ける権利を有するに至るのであるから、若し、右買収処分を取消さるるに至れば当事者の蒙る不利益は重大であるばかりでなく、他方、右買収処分を取消す公益上の必要は寸毫も存しない。よつてひとたび本件土地につき附近の土地と共に為した自創法第三条による買収処分はこれを取消すことができないものというべく、従つて、右買収処分は依然としてその効力を有するものであるから、同一土地につき更に同法第三十条により為した買収処分は当然無効といわなければならない。
第五、仮りに前述の主張が理由がないとしても、本件土地については自創法第三条による買収の外は認められないものである。
そもそも農地調整法ならびに自創法は、現実に農地を耕作する農民の経済的安定を確保し、併せて、農地の有効的活用を助長することをその最大眼目としている。従つて、小作地である農地については、法の制限内において、現実に小作している農民にこれを買収して売渡すことが法の精神であつて、自創法第三十条により未墾地と共にその附近の農地を買収することのできる場合とは全くその条件性質を異にするものと解すべきである。何となれば、前者による買収は小作農民に対し、買収した農地につきその売渡請求権ならびに小作権其他の権利をそのまま保有することを認め、後者による買収は何等前述の如き権利を容認しないのであるから法の精神にもとること甚しき結果を招来するからである。
第六、仮りに右主張が理由なしとするも、自創法第三十条第一項第三号により買収すべき土地につき同項第一号による買収は無効である。
農地調整法ならびに自創法はいずれも厳格に解釈適用すべきであることはすでに学説判例の認むるところであるばかりでなく両者はその条件、手続ならびに利害関係を異にするからである。」
被告等指定代理人ならびに訴訟代理人は「原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、答弁としてつぎのとおり述べた。
「A本案前の主張
一、未墾地買収計画に対して都道府県知事のする認可は、国の行政機関相互の間においてなされる内部的な行為にすぎないのであつて、これによつてはただ都道府県知事が買収令書を交付する要件が具備される効果を生ずるに止まり、この認可によつて直接に国民の具体的権利義務に影響を及ぼすものではない。従つて、被告宮崎県知事のした認可の無効確認を求める本訴請求は法律上の利益を欠く不適法な請求として棄却さるべきである。
二、およそ、都道府県知事は、国又は都道府県の機関即ち行政庁であつて、都道府県知事自体は権利能力を有するものではないから、行政事件訴訟特例法第三条のような特別の法令の規定がない限り当事者能力を有しない。而して、未墾地買収計画に対する認可の無効確認の訴訟については行政庁に当事者能力を認める特別な法令の規定はないから、被告宮崎県知事に対する本訴請求は当事者能力を有しない者を被告とする不適法な請求として棄却さるべきである。
B本案の答弁
第一、原告等の請求原因事実に対する答弁
一、請求原因第一の事実中、原告等が昭和二十四年十二月二十四日当時それぞれ原告等主張のように本件各土地を耕作していたことは認めるが、その余の事実は知らない。
二、請求原因第二の事実中、未墾地買収計画を定めた昭和二十二年十二月二十日当時、および、買収の時期である昭和二十三年三月二日当時において本件各土地がすべて農地であつたこと、ならびに、右各当時において本件各土地と共に買収した附近一帯の土地がすべて農地であつたことを除き、その余の事実は認める。本件各土地のうちの一部は右各当時においては荒地であり、その後において原告等が耕作して農地としたものである。また、本件各土地の附近一帯の土地は右各当時においては大部分荒地であつた。
三、請求原因第三の事実中、宮崎県東臼杵郡富島町農地委員会が昭和二十二年五月十二日本件各土地および附近の土地について自創法第三条による農地買収計画を定め、宮崎県農地委員会が同年六月三十日承認したことは認めるが、被告宮崎県知事がこれの買収令書を交付したことはない。右買収計画を取消したのは富島町農地委員会であつて、その日附は昭和二十二年十一月二十九日である。
第二、被告等の主張
一、本件土地につき、(他の附近土地と共に)さきに自創法第三条により為した買収計画を取消した行為は無効であり、従つて右買収計画は有効であるから本件土地につき後日再び自創法第三十条により為した未墾地買収計画は無効であるとの原告等の主張(第四)について。
原告等の法律上の主張は買収および売渡処分完了後にあつては妥当であるが、本件においては前述の如く農地買収計画の承認があつたに止まるのであるから、未だ原告等には害さるべき具体的権利は設定されていない。富島町農地委員会が本件各土地の一部および附近の土地について定めた農地買収計画を取り消したのは、右買収計画を定めた当時右委員会が農地なりや否やは現況によらずに土地台帳の地目によつて定めるものと誤解し、本件各土地および附近土地の現況が大部分荒地であつたにもかかわらず、土地台帳の地目が田または畑であつたため、右誤解に基いて右買収計画を定めたこと、および、自創法第三十条第一項第三号の規定を看過して右買収計画を定めたことの各違法を後に発見し、宮崎県農地委員会によつて本件のような未墾地買収計画を定めることが適当であると考えたからである。右のように、自創法第三条による本件農地買収計画は大部分が未墾地であつた土地に関するものであり、農地であつた部分も自創法第五条第八号に該当するので結局違法不当であつたのであるからその取消は有効である。
二、本件土地については自創法第三条による買収の外は認められず同法第三十条による買収は無効であるとの原告の主張(第五)について。
自創法第三十条第一項第三号に該当する土地である限りいかなる農地であつても買収できるものであるから原告等の主張は理由がない。
三、自創法第三十条第一項第三号により買収すべき土地につき同法第一号による買収は無効であるとの原告の主張(第六)について。
本件各土地が自創法第三十条第一項第一号によつて買収されたことは、前述のとおり、被告等はこれを認める。而して、右各土地のうち、買収の時期当時において荒地であつた部分は、同条第一項第一号の要件を具備する土地であるから、その買収は適法であり、右当時において農地であつた部分は、同項第三号の要件を具備する土地であつて、それに対して為された同項第一号に基く本件買収は、同項第三号に基く買収として効力を有するものである。
そもそも、本件各土地を含む附近一帯の土地は、もと私人の所有地であつたが、昭和十七年十月頃から昭和十八年三月頃までの間に、三菱石油株式会社が、軍需用の精油工場の敷地の用地として買い受け、当時その一部に存続していた小作契約も適法に合意解約した上整地して工場建設工事に着手したが、終戦のため工事を中止した結果全く荒地の状態になつた。しかるところ、終戦前の昭和二十年春頃から当時の極度の食糧不足のため、附近住民で本件土地を含む附近一帯の土地の一部を無断耕作する者があつたので、右会社はやむを得ず昭和二十一年二月頃附近の大世話人を介して附近の住民約三百名に対し、合計約四十町歩を昭和二十年七月一日から三年間の期間の約定で賃貸した。そして、前記買収の時期当時においては、買収地百六十五町八反四畝歩のうち約三十七町歩が耕作されて農地となつていた。しかしこの農地は、田にあつては、水利の便がないため天水田の一毛作田であつて、しかも病虫害が甚しく収穫の著しく不定な水田であり、畑にあつては、水田の土を盛り上げたものであつて凹凸も甚しく、また、排水不良のため虫害が多く農地としての利用度は著しく低い状態にあつた。本件土地を含む附近一帯の土地は水利の便を得て適切な開発工事が施行されれば完全な二毛作田となり、理想的な農地となり得る土地なので、宮崎県においては、耳川より水を引き、本件土地を含む附近一帯の土地について、国庫負担による開拓建設工事、および、国庫補助による開田工事等の開発事業を施行して完全な二毛作田にする計画を立て、この計画に基いて、本件土地を含む附近一帯の土地百六十五町八反四畝歩について未墾地買収計画を定めて買収したのである。従つて、本件土地を含む附近一帯の土地百六十五町八反四畝歩のうち、買収の時期当時において荒地であつた部分約百二十余町歩(全買収地の七割八分)は自創法第三十条第一項第一号の要件を具備するものである。
また右当時において農地であつた部分約三十七町歩(全買収地の約二割二分)は、前記のとおり、現状のままでは到底二毛作田となり得ず、附近一帯の買収した荒地と一体として前記開拓建設工事および開田工事等の開発工事を施行することによつて始めて完全な二毛作田となり得るのであるから、この農地であつた部分は正に同項第三号の要件を具備する農地である。
およそ、ある条項に基いて為された行政処分がその条項に定める要件を欠く場合でも、他の条項に定める要件を具備するときは、その行政処分はこの他の条項に基いてされた行政処分として効力を有し得る場合があることは学説および裁判例において是認されているところである。しかし、いかなる限度においてこの行政処分の転換の理論が許容されるかは議論の存するところであるが、少くとも、自創法に基く買収にあつては、両条項に基く買収がともに他の要件、手続および効果において異ならないときは、両条項に基く買収は相互に転換し得るものと解すべきである。
これを本件について見るに自創法第三十条第一項第一号に基く買収も同項第三号に基く買収も、ともにその要件として、
(1) 客観的に当該土地が自作農を創設するために必要があること、
(2) 農地委員会等の買収の機関がその旨の認定をしたこと、
(3) 当該土地が同項各号の一に該当すること、
の三要件を必要とし、これ以外の要件を必要としないものであるから両者の買収はその要件において異ならない。この点転換の許されない自創法第三条第一項に基く買収と同条第五項に基く買収との関係とは異なる。蓋し、この場合には、後者に基く買収にあつては前者に基く買収に比し、(1)客観的に当該農地が自作農の創設上買収することが相当であること、および(2)農地委員会等においてこの相当性の認定をすること、の二要件が加重されており、両者はその要件を異にしているからである。
さらに、自創法第三十条第一項第一号に基く買収も同項第三号に基く買収も、その手続において全く同一であることは疑のないところである。
さらにまた、この両者に基く買収にあつてはその法律効果が同一であることも疑のないところであり、また、転換の許否の観点から法律効果の一として数えられるべき売渡の相手方の点においても、両者にはともに同法第四十一条第一号が適用されその間に差異はない。この点転換を認むべきでない同法第三条に基く農地買収と同法第三十条に基く未墾地買収との関係とは異る。蓋し、買収の効果として前者の買収にあつては同法第十二条が適用され、同条第二項により従前存した一定の権利が復活するのに比し、後者の買収にあつては同法第三十四条において同法第十二条第一項のみを準用し、同条第二項を準用していない結果かかる権利の復活がなく、両者は法律効果を異にし、且つ、売渡の相手方については、前者には同法第十六条、同法施行令第十五条から第十八条までが適用され、後者の売渡の相手方とは異る。また、転換の許されない同法第三条に基く現在買収と同法第六条の二または第六条の五に基く遡及買収との関係とも異なる。蓋し、この両者は売渡の相手方の点において同法施行令第十七条により異るからである。
右のように自創法第三十条第一項第一号に基く買収も同項第三号に基く買収も、ともにその要件、手続および効果において何等異る点はないのであるから、両条項に基く買収は相互に転換し得るものである。従つて同項第一号に基く本件係争土地に対する買収は同項第三号に基く買収として効力を有するものである。
四、かりに前述の行政処分の転換の主張が理由がないとしても、本件係争土地に対する自創法第三十条第一項第一号に基く買収は無効ではない。
およそ、行政処分に法令に違反する瑕疵があるときには、その瑕疵を原因として行政処分が無効となる場合と、単に判決によつて取消される可能性を生ずるに止まる場合とがある。行政処分に存するいかなる瑕疵が無効原因となり、いかなる瑕疵が取消原因に止まるかというに、抽象的にいえば、その瑕疵が重大であり、且つ、外観上明白な場合に限り行政処分の無効原因となり、その瑕疵が右重大且つ明白なものでない場合には行政処分の取消原因に止まるものと解すべきである。
これを本件について考察してみる。一定の土地が自創法上の農地なりや否やはもとより当該土地が耕作の目的に供される土地である(自創法第二条第一項)か否かの客観的事実状態によつて決定すべきことはもちろんであるが、耕作の目的に供されている事実状態が単に一時的のものであり、他に当該土地の本来の使用目的があるときは当該土地は農地と解すべきではない。本件係争土地は、既述のとおり、附近一帯の土地と共に三菱石油株式会社が工場敷地として買い受け、地均しをした上工場建設に着手したが、当時の極度の食糧不足のため一部の土地を無断耕作する者があつたので、右会社は止むを得ず本件係争土地を含む附近一帯の土地の一部を三年間の短期間の約定で賃貸したものであり、この期間を延長する意思はなかつたのである。従つて本件係争土地は一時的に耕作の目的に供されたにすぎず、見方によつては本件土地の本来の使用目的は耕作ではなく、従つて本件土地は農地ではなく自創法第三十条第一項第一号にいう「農地及び牧野以外の土地で農地の開発に供しようとするもの」(未墾地)とも考えられないこともないのであるから、本件土地を未墾地と認定した過誤は重大且つ明白な瑕疵ではない。
さらに、本件土地は、既述のように、田にあつては水利の便がなく、降雨による一毛作の天水田であり、病虫害が甚しく、また畑にあつては水田の土を盛り上げたものであつて凹凸も甚しく、排水不良のため虫害が多く、ともに農地であつたとしても自創法第五条第八号の農地買収の除外地たる「収穫の著しく不定な農地」であつたのであるから見方によつては本件土地の当時の現況は農地と未墾地の中間的な状態ともいえるのである。従つてこの点から見ても本件土地を未墾地と認定したことは重大且つ明白な瑕疵ということはできない。従つて本件土地を自創法第三十条第一項第一号に基いて買収したことは違法であるとしてもこの違法は買収の取消原因たるに止まり無効原因となるものではない。」(立証省略)
三、理 由
まず被告等の本案前の主張一、すなわち、宮崎県農地委員会が本件各土地について定めたいわゆる未墾地買収計画につき、被告宮崎県知事の為した認可の無効確認を求める訴が法律上の利益を欠くものであるかどうかについて考察するに、自作農創設特別措置法第三十一条に定める未墾地買収計画に対する認可というのは、都道府県知事が都道府県農地委員会の定めた買収計画を審査確認する行為であつて、単に行政庁の内部間において、上級行政庁から下級行政庁に対してなされる意思表示に過ぎず、買収計画の樹立又は買収令書の交付とは異なつて外部に対して表示せられることがなく、またこれによつて直接に国民に対し具体的に何等法律上の効果を及ぼすものではないから、都道府県知事のなした右買収計画に対する認可の無効確認を求める利益はないものといわねばならない。この点において被告宮崎県知事の為した本件未墾地買収計画の認可の無効確認を求める原告等の本件訴は法律上の利益を欠くものであるから、他の点を判断するまでもなく不適法なものとして却下すべきである。よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 仲地唯旺 斎藤格之助 高林克巳)
(目録省略)